台湾に到着して、まず、マッサージの予約に行った。
ホテルの前の、古い雑居ビルの6階。
ちょっと、どきどきしながら、エレベーターに。
3階で、おおきなベットマットを抱えた、ふたりのおじさんが乗り込んできた。
エレベーター、ぎゅうぎゅう。
わたしのほうに、マットが寄りかかってきて、おじさん、「ドゥイブチー」と。
あ、これ聞いたことある。
「ごめんなさい」だ。
中学生の頃、部活の遠征で、中国に行ったことがあった。
今も思い出せる、数少ない単語のなかの、ひとつが、でた。
おじさん、「マッサージいってらっしゃい」みたいなことを言って、見送ってくれた。
なんだかうれしかった、はじまりの一ページ。
ホテルの目の前は、台北駅。
次の日は、台中へ行くので、その切符を買いに。
旅先でローカルなことをするのは、たのしい。
できるだけ、そんな旅がいいなーと思う。
続いて、街中を歩いてみる。
気持ちのよい道。
台湾総督府。
台湾に来る前日、「湾生回帰」という映画を観た。
戦前の台湾で生まれた、日本人の話。
その中で、父親が総督府で働いていた、というおばあさんが、当時通った学校を訪ねる場面。
いつもお昼休みになると、事務所に預けられたお弁当を走って取りに行ったんだ、と。
そうそうこの屋根、と、うれしそうに話す。
その屋根があった。
歩きながらふと目をやって、あ、あの屋根だ!と。
おばあさんの思い出がつまった、たいせつな場所。
自分にとっても、たいせつな場所のように思える。
映画、観てきてよかった、と思った。