3月4日(月)、朝早く起きて、パネルを書いた。
2日前、広島市現代美術館で開催中の企画展「とびたつとき 池田満寿夫とデモクラートの作家」を鑑賞したこと、原爆ドーム前に立った日から受けたことを、表したいと思った。 これを持ってまた原爆ドームに行く。 それともうひとつ、「できるかも」と思いついたことの準備をして、家を出た。 午前中は、横川シネマで映画。 帰省したときは、必ずここで映画を観る。 応援したい、ずっとあってほしい場所。 その前に、横川駅前でやっていた「古本市」に立ち寄る。 広島ならではのよい本も色々あって、気づいたら映画の時間10分前になっていた。 急いで数冊購入し、小走りで映画館へ。 予告編を観るだけでも、横川シネマに来る価値あるな、と思う。 「新根室プロレス物語」 その時間にやっているというだけで、特別選んだわけではない映画だった。 だけど、観ることができて本当によかった。 笑いあり涙あり、人を思いながら、やりたいことに向かうこと、ユーモアを大切に、というメッセージを受け取って、元気が出た。 たくさんの人に観てほしい。 横川シネマでは、3月8日㈮まで上映。 13時すぎ、映画のあとにいつも寄る珈琲屋さんに行こうかと向かう途中、ベトナム料理のお店を発見し入店。 バインミーと迷って、鶏肉のフォーにした。 お腹いっぱいになったので珈琲屋さんはまたにして、原爆ドームに向かって歩く。 毛糸のぼうしもマフラーもいらない暖かさ。 会津の家族からは、雪が30㎝近く積もったというメールが届いた。 原爆ドーム前に到着。17時半からのスタンディングにはしばらく時間があった。 今朝「できるかも」と思いついたことの準備をする。 それは、長野県松本市で始まった「本読みデモ」のようなこと。 帰省に持ち帰っていた本は、そのつもりではなかったのでちゃんと準備したものではなかったけど、その面々を見て、パレスチナに特化した本だけではない、だけど、だから、いいかもしれないと思った。 〇『ガザとは何か』岡真理 〇『現代思想02 パレスチナから問う』 〇『ヒロシマ・ノート』大江健三郎 〇『若者、ガマフヤーと語る』坂本菜の花他 〇『日本国憲法と夜の星』山口法子他 そこに、父の本棚から拝借した一冊と、横川駅前の古本市で購入した本を加えた。 〇『沖縄 衝撃の記録写真集』 〇『黒い雨』井伏鱒二 〇『海をあげる』上間陽子 〇『重慶からの手紙』早乙女勝元 〇『南京からの手紙』早乙女勝元 本を、ベンチの脇に積んだ。 だけどそのあと、緊張してなかなか勇気が出ず、しばらくパネルを出すことができずにいた。 これまで、ひとりでスタンディングする人の姿を、SNSで何度も見てきた。 その人たちのことを思い出した。 こんなにドキドキするんだ、みんな、ここから勇気を出したんだ、と。 ひとりの男性が、こちらをじっと見ていたので、「よかったら一緒に本読みませんか」と声をかけてみた。 その方は、昔商社に勤めていた関係で語学が堪能で、英語とスペイン語を使って平和記念公園のガイドをしているとのこと。 「被爆二世」だと言っていた。 5分くらいガイドの仕事について聞かせてくださって、「じゃあがんばって」と去って行った。 男性のおかげで少し力が抜けて、その後パネルを出すことができた。 私は、『黒い雨』を開いて読み始めた。 最初は緊張して、なかなか文章が頭の中に入ってこなかった。 だけどだんだん読めるようになって、落ち着いてきて、本ってありがたいと思った。 途中、女性が少し覗いてくれたあと、年配の男性が近づいてきて「すばらしい活動をされていますね」と声をかけてくれた。 男性は、停戦を願いながら、ハマスの攻撃を非難し「どっちもどっち」だという考えを話された。 方法として非難されるべき部分があっても、ハマスが抵抗としての攻撃をするに至ったその根本には、1947年から続くイスラエル政府による暴力、民族浄化の歴史がある。 そのことについて伝えたい気持ちはあったけれど、きちんと説明できる自信もなく、私は「良かったらこの本、読んでみてください」と岡真理さんの『ガザとは何か』を差し出した。 とても穏やかに話をしてくれる方ではあったけれど、どんな反応が返ってくるか不安だった。 さらりと流されるか、嫌悪感を示されるかもしれない。 男性は、本を手に取り少しながめた後、「読んでみます」と言ってくれた。 そして、ここにタイトルをメモしてもらえますか、と。 あまりにあっさりそう言われたので、え、と驚いた。 いつも行く本屋にあれば買うし、なければ取り寄せると。 その後、LGBTQの方々の権利について持論を語られて、「あなたはどう思う?」と聞かれた。 男性と考え方は少し違ったけど、聞いて下さる方だと信頼して、今度は落ち着いて自分の考えを話すことができた。 結局30分以上、そうやって色々なことを話して、男性は「今日会うことができて良かった」と言って、その場を後にされた。 私もお礼を伝え、男性を見送った。 本があってよかった、と思った。 そして、立場が違っても、本を、私を受け入れてくれた男性の心の大きさとやさしさを尊敬し、本当にありがたく思った。 17時半から、広島パレスチナともしび連帯共同体(hiroshima palestine vigil)のみなさんと原爆ドーム前に立った。 ここに立ち寄るのは何度目かだという、中国の男性がお二人。 古本市で買った「南京」「重慶」の本があったから、「過ちの歴史をきちんと学んで、みなさんと信頼しあえる関係を築いていきたいと思っています」と、伝えることができた。 本に助けられた1日。 前回は乗り遅れたバスに乗って帰宅。 両親はまた、待ってくれていた。 麻婆豆腐と新玉ねぎのサラダを一緒に食べた。 #
by morinokasumi
| 2024-03-07 11:39
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これ以上にいま、私たち人類が口にすべき言葉はないように思う。 もうだれも殺さないで。 3/2㈯、原爆ドーム前のスタンディングに参加するために出かけた。 山口法子さん、ナツメ書店さんの「our childrenしおり」も一緒に。 「CRY IN PUBLIC」のTシャツを着て、小泉さよさんの「SAVE GAZAバッジ」をつけて。 午前中は、広島市現代美術館へ。 小森はるかさんと瀬尾夏美さんのコレクション展をめあてに。 美術館までは、ものすごい坂。 たどり着いてまず、喫茶室でいっぷく。 「ブレス ヒロシマ BREATH HIROSHIMA」という珈琲がとてもおいしくて、思わず店員さんに話しかけた。 私が飲んだのは、ミルクブリュー。 企画展は「とびたつとき 池田満寿夫とデモクラートの作家」。 デモクラート美術家協会、というものの存在をはじめて知った。 「既存の公募美術団体の審査制度や階級制度に異を唱え、それに賛同した作家たちが集まって活動を行っていた」とある。 協会を組織した、瑛九の言葉。 「現実に対する批判の精神なしに芸術が成立するだろうか。すくなくとも現代芸術が成立するために現実の我々のすむ社会にたいして何等の批判なしに、何等の自己主張なしに、したがつて世界観なしには不可能である。我々は現代をみることなく、現代美術を生むことは出来ない」 社会の不条理、そこで痛んでいる人や場所のことを、私はこれからも考えずにはいられないと思う。 どうやっても自分の暮らしと切り離すことは出来ないことを切り離して、穏やかな暮らしや畑、手仕事のことだけを語ることはできない。 それはとても空虚なことに感じる。 暮らしや手仕事、表現することを信じているから、大切に守っていきたいと思うから、誰であってもどこであっても、それが脅かされ踏みにじられていることに声をあげないことは、私にとっては嘘だ。 たった今起きている虐殺を見過ごしてしまう社会が、なにを大切にできるというのだろう。 人が生きることの、何を語れるというのだろう。 虐殺と、沈黙と、届かない声、毎日たくさんの子どもたちが殺されていて、そのなかで、自分がこれからどう生きて行けばいいか、分からなくなる。 やってくる春を、ただ歓びとして受け取る? 「とびたつとき」 デモクラートの作家たちの作品をみながら、私もそうできたらと、かすかな希望をもらう。 15時から街中で、16時からは原爆ドーム前に立った。 最初はすごく緊張した。 ガザでお仕事をしていて一時帰宅中だという若い女性が、足を止めて下さった。 原爆ドームの前でこうして声をあげてくれる人たちがいること、現地でスタッフみんなで共有しています、と。 原爆ドームは今、なんて言っているだろう、と思う。 「人が、子どもたちが、ただ殺されていくことに、黙っとったらいけんよ」 「ヒロシマを悼む心、繰り返したらいけんと思う心で、殺さんとってって言わんといけんよ」 「みんな頼むよ」って、原爆ドームは言いよるんじゃないかなぁ。 原爆ドーム前から、路面電車に乗って広島駅、そこから電車で最寄り駅まで行き、バスで家まで帰る。 バスの最終が19時半発なので、それに乗ろうと思うと、アクションの終わり19時まではいられない。 もう少しもう少しと思いながらいたら、結局終バスに間に合わなかった。 両親は70歳過ぎたので、夜の運転はさせたくないと思っていたのだけど、お父さんに迎えに来てもらうことになってしまった。 20時ころ家に着くと、ふたりは夕飯を食べずに待ってくれていた。 湯豆腐と、ポテトサラダと、アジフライの夕ごはん。 こんなにもあったかくて、幸せなことが、かなしくなったりする。 広島パレスチナともしび連帯共同体(hiroshima palestine vigil)、私もその日のひとりになれて、うれしかった。 みなさん、いつもありがとう。 #
by morinokasumi
| 2024-03-04 04:13
| 燈日草
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前回の投稿で紹介した署名活動、 2月27日、会津若松市東山地区・湊地区での風力発電事業について申し入れのため、東京都霞が関にある農林水産省林野庁を訪問。 博昭さんが事前にアポイントを取り、私も同行した。 強風で新幹線が遅れ、到着は約束の11時ぎりぎりに。 入場するために必要な用紙の記入をしていると、なぜか「食堂の利用ですか?」と聞かれた。 お昼ご飯を食べにきた二人に見えたもよう。 担当の方が入り口まで迎えにきてくださり、7階の部屋に通された。 二人の方と向き合って座り、博昭さんは準備した資料を渡して、歴史的なことを含めた経過、現状、問題点を伝え、事業予定地の猛禽類(イヌワシ・クマタカ等)の生息地保護のため、国有林(緑の回廊保護区)を貸与しないようお願いした。 お二人は話の所々で相槌を打ちながら、熱心にメモをとっておられた。 博昭さんの話が一通り済み、相手方の第一声は、「このような誰もが知りえない貴重なお話をしてくださったことに、感謝します」というものだった。 そして、「イヌワシ、クマタカが生息している場所で風力発電事業が行われることに対して、専門家を交えてしっかり精査します」と仰った。 30分くらいでお話を終え、退出時に私は「ご丁寧にお迎えいただきありがとうございました。よろしくお願いします」と挨拶をした。 誠実な態度で向き合ってくださったと思う。 昭和村の風力発電事業の時もそうだったけれど、人対人であることを大切にしたい。 無事に終わってほっとしたところで、せっかくなので一階の食堂でお昼ご飯を食べて、庁舎をあとにした。 博昭さんは来週、事業窓口となっている前橋市の森林管理局へ申し入れに行く予定。 私は今日から約2週間、広島に帰省してきます。 #
by morinokasumi
| 2024-02-28 17:14
| 暮らし
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会津若松市東山地区、湊地区で、3事業者による風力発電事業が進んでいます。
現在、背あぶり山にある8基、布引高原にある33基の間を結ぶように、新たに50基以上の風車の建設が予定されています。 予定地では、今年1月に天然記念物のイヌワシのつがいが確認され、さらに絶滅危惧種のクマタカも8家族が生息し、毎年ヒナが誕生して子育てが行われています。 東山・湊地区は、周囲の開発に追われた鳥たちが追いつめられて密集している、最後の居場所です。 そこに今、風車が建とうとしています。 2022年、昭和村での風力発電事業が明らかになったときと同じように、博昭さんは行政に対して断続的に申し入れをして、この豊かな地域を鳥類保護区として大切に守っていくことを提案しています。 2022年昭和村風力発電事業 風力発電事業に揺れ動き、力を合わせて乗り越えた昭和村。 巨大な事業に暮らしや尊厳が脅かされることの不安を知っている立場から、できることがあると思います。 あのとき、村内外問わず危機感を共有し、力を貸してくれた人たちがいたように、 今一生懸命状況を変えていこうと頑張っている人たちに対して、心を寄せて行くことができればと思っています。 市民の人たちによる署名活動が始まっています。 多くの署名が集まり、活動の後押しとなることを願っています。 #
by morinokasumi
| 2024-02-27 09:43
| 暮らし
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今週末2月24日㈯・25日㈰、喰丸小で「燈日草」開きます。 25日㈰は、道の駅からむし織の里で、雪まつり! ぜひお立ち寄りください。 peco(祥伝社)¥1650 考えつづけなくてはと思えるのは、燈日草のおかげ。 燈日草がある、洋子さんもいると思えると考え続けていける。 こんなふうに思って、伝えてくれる人がいて、だからまた私も考え続けていける。 私がいま、ひとつのまるい空白を持っていることを教えてくれたのは、散髪屋の姉さま。 前にも見つけてもらったことがあったので、なんだか不思議なご縁を感じた。 ふと疑問に思って、こういうとき、相手に伝えるんですか、と聞いてみたら、基本的にはそうする、と言っていた。 以前も思ったことだったけど、自分の知らないうちに、日々にある様々を、体は受け止めてくれているんだと。 すまんねぇ、ありがとさん。 私は自分が感情的なことが、いつもはずかしい。 どうにかしたほうがいい。 でもそのことをどうにかしようとしてどうにかできるなら、もうとっくにどうにかしているな。 もうちょっと自分のことを、笑っていこう。 そんななか目についた、梅崎春生『怠惰の美徳』。 さっそく買って読み始めてみると、ふふふ…と笑って声がもれてしまう。 ぐうたらな人生の、可笑しさと、もの哀しさ。 たぶん、こういうのが必要だ。 2月18日㈰は、「2.18 ラファに手を出すな!全国連帯デモ」の日だった。 私も全国各地で行動を起こす人たちと一緒に何かしたいと思って、仙台駅前で行われたスタンディングとスピーチ(パレスチナと仙台を結ぶ会主催)に参加をしてきた。 若い人たちの姿、言葉は、希望だと思った。 高校生らしき男女四人が、少し離れたところに立って、なんとなく遠慮がちに、こちらを見ているようだった。 声をかけに行ってみようか…と思いながら、そうできずに、しばらくして彼らは二手に分かれて去っていった。 パレスチナのことに関心があって、気持ちを持ってそこに立ってくれていたのかな。 スタンディングには大学生もいたけれど、全体的に年齢層の高い集まりだったから、入りにくかったのかもしれない。 あとでヒロアキさんに話したら、スピーチに拍手をするしぐさもあったとのこと。 やっぱり声をかけてみればよかった、と後悔した。 おせっかいおばちゃん発動して、「ありがとう。自分のすきなファッションや音楽、感覚を生かして学んだり行動してくれたらうれしいよ。おばちゃんもがんばるよ」って伝えられたら良かった。 大人の役割。 私が立っていたのは、70代くらいの女の人の横で(団塊の世代と言っていた)、最初その方に「隣いいですか」と声をかけた。 何も分からなかったので、「今スピーチしているのは誰ですか」とか質問をして、代表の方や東北大学の学生さんのことを教えてもらった。 その方は、原発事故後の子どもの甲状腺がんや汚染水問題に関する活動にも、参加しているのだと話してくれた。 別れ際に私は、「こんなふうに、上の世代の方が行動し続けてきて下さったことに、感謝しています」と伝えた。 私たちがこれまで、おかしいと思うこと、不条理に対して、積極的に声にしたり集会をしたり路上に出て主張せずとも、なんとか社会がぎりぎりまともだったのは、代わりにそれをやってくれる人たちがいたからだと思う。 ただ見ているだけ、考えているという立場だけでは、もう何も守れない。 全国20か所で行われた、「2.18 ラファに手を出すな!全国連帯デモ」。 仙台から帰宅した夜、2,000人が集まった新宿をはじめ、各地のデモの様子が映しだされるSNSの投稿を見ながら、そこで振り絞られている勇気と声に、「ありがとう」という気持ちが溢れた。 目の前で起こっている暴力の是非は、誰かに判断してもらうことじゃない。 意志を持って、何を声にするかを自分で選びたい。
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by morinokasumi
| 2024-02-21 19:55
| 燈日草
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